ありがとうペルソナ3リロード

 


私がペルソナ3に初めて触れたのは、忘れもしない数年前の初春。冬が過ぎ、春の暖かさが訪れるようになった頃です。
別ジャンルのフォロワーに、良いゲームがあるよ〜と言われて勧められたのがペルソナ3でした。PSゲームなどろくに遊ばない私が一体何にビビッときたのか、ペルソナシリーズどころかアトラスゲーすら何も知らないままPSvitaを購入し、ペルソナ3ポータブルの男主人公ルート…要するに正史ルートをプレイしたのが全ての始まりだったのです。
謎多きストーリーと魅力的なキャラクター達と楽曲、それらで構成された独特の世界観と爽快感のあるバトルに私は瞬く間にのめり込み、幸運な事に一切のネタバレを踏まないまま一ヶ月でクリアしました。


救いがあるような、ないような。
好きに生きて好きに死ねばいいと、まるでそう言われたような。


ただ息をして生命活動を存続することという意味での『生』を肯定する訳ではなく、死そのものを人生の一部として受け入れる事を由とするこの作品は、当時の私の心に深く深く刺さり、今もなお抜けない棘となりました。


本編をクリアした後もP3Mを完走して号泣し、P3F後日談をクリアして絶望し、PQと漫画版と舞台版でまた泣き、ダンシングで救われて、PQ2で血反吐を吐き…とこの数年間も色々ありましたが、私の中からペルソナ3とP3主人公が遠ざかる事は一度もありませんでした。
一切の誇張なく、ペルソナ3とは私の人生そのものでした。

 

そして、2023年6月12日。
フルリメイク作品『ペルソナ3リロード』発表。

 

https://x.com/p_kouhou/status/1668815764508528646?s=46&t=HhfGPUmSuh3U4o3csHlonw

 

P3FとP3PとPQ2で正史S.E.E.S.の絆を踏み躙られた傷が未だ癒えないP3ファンは、絶対にP3リメイクなど出さないでくれ、下手に触るくらいならそっとしておいてくれと言い続けてきました。
また傷つく可能性があるのなら、P3Rにも背を向けるべきだったのでしょう。

しかし、

4Gamer
 P5基準の遊びやすいP3になってほしいと希望しながら,全体から漂うようなギラっとしている感じ,攻めている感じはしっかり残っていてほしいという自分勝手なことを考えていたのですが,開発の皆さんの話を聞いているかぎり,心配はなさそうです。

新妻氏:
 そこは大事にしていましたから。私も開発側になってあらためて,その荒削りなところがP3の魅力だと感じました。
 ゲームの部分の粗さは,いま遊んでもらうゲームにするためにはしっかり磨かないといけませんが,作品の本質にあるエッジが効いているところは,角が丸くならないようにしなければならない。今回のリメイクはそのあたりをしっかり考えて取り組めたと思います。

(中略)

冗談っぽく言ってしまいましたが,この話し合いが本当にいいリメイクを生んだ結果につながったんだと思うんです。一人ひとりがオリジナル作品に敬意をもって,いちプレイヤーだったころの気持ちも大事にしながら開発者として意見を出し,ゲーム制作に取り組んでいましたから。

(中略)

オリジナル版に敬意を持ち,とにかく丁寧に作ったリメイク作品です。発売はまだ先ですが,今後も注目していてください。

[インタビュー]「ペルソナ3 リロード」は,どのような考えでP3を“再装填”した作品なのか。開発のキーマン3名に話を聞いた


P3Rプロデューサーの新妻氏の覚悟に満ちたこの発言を見て、もう一度ペルソナチームを信じてみようと思い、発売まで待ち続けると決めました。
プロモーション時点で不安に思う事や残念に思った事もたくさんありましたが、P3Rをペルソナ3リメイクとして楽しみに待つ事ができたのは、スタッフの方々の真摯で誠実なペルソナ3愛が痛いくらい伝わったからです。ゲームの発売をこんなに楽しみに待ち続けられたのは、P3Rが初めてでした。


そして2024年2月2日にP3R発売を迎え、2月12日に総プレイ時間78時間でクリアしました。
発売までの悲喜こもごもと発売後のリアルタイムプレイ記はXアカウントの方に記録しているので、深くは語りません。
一言で感想を言い表すならば、

 

「今日まで生きて、ペルソナ3リロードをクリアする事ができてよかった」

 

これに尽きます。


原作と比べて進化した点や追加要素についてはファミ通等の公認記事の方がまとまっていますし、ユーザー視点の感想は販売サイトやSteamのレビュー欄にたくさん投稿されているので、ここでは割愛します。
ここではP3P女性主人公ルートに激怒し、P3F後日談とPQ2で心に深い傷を負ったP3主人公ファンとして、P3Rプレイ感想と言うほどでもない短いお気持ち記事をネタバレ無しで書いていこうと思います。多分ここを見ている人達もそっちを見たくて覗いてるんでしょうし(笑)。

 


P3Rありがとうその1

本作で追加された、S.E.E.S.の男仲間のサイドエピソードである『リンクエピソード』。既存のコミュを削除する訳にはいかないのでその代わりに、という触れ込みでしたが、これの満足度と完成度がまあ素晴らしかった。
P3の仲間キャラのバックグラウンドはこれまでの派生作品でも語られましたが、それらと被らない全く新しい切り口から順平、真田、荒垣、天田、コロマルのエピソードが描かれて、P3はまだこんなポテンシャルを秘めていたのか!と驚かされました。

リンクエピソードは基本コミュやコープとは違い本筋とリンクして進むので、未熟な仲間達が月日とともに成長し人間関係が変わっていくP3のシナリオ構成ともよく合っている。エピソードを全て見届けると各キャラから記念アイテムがもらえ、新規ペルソナも作れるようになるので、実質コミュみたいなものです。
というか、順平のリンクエピソードの解放ペルソナ名を見た時は大声が出ました。あれはずるいって!
PVでお披露目された時はトンチキシナリオかと思われていた真田のパンケーキパーティーも、蓋を開けてみれば彼の過去とリンクしたシリアスな話だったり。荒垣のリンクエピソードに至っては、これをプレイせずに荒垣ファンを名乗れないだろ…と思わせるくらい良い話でした。主人公達とちゃんと交流した上で、それでも荒垣の決意は揺るがなかったんだなと改めて実感しました。
P3主人公ルートはこれまでP3P女主ルートの下位互換扱いをされてきて、ハム子でないと荒垣を救えないだの男仲間とコミュれないだのギスギスしてるだのとハム子ファンからさんざんマウントを取られてきたものです。しかしP3Rのリンクエピソードをプレイしてみると、これだけでハム子厨を黙らせられるくらい濃厚で草という感じでした。他にも仲間と一緒に屋上で野菜を育てたり料理したりテレビを観たり読書会したり冷蔵庫で物々交換したり…そんな充実した寮生活を送るうちに、今までハム子厨にマウントをとられてきた苦い思い出がみるみるうちに上書きされていきました。
これこそが本来のペルソナ3、私とP3主人公が愛した一年間と言えるかけがえのない日々でした。ありがとう。

 


P3Rありがとうその2

リロードのゆかりッチがとてつもなく可愛い。ゆかりッチは原作でも派生でもベリー可愛い女の子でしたがリロードではそれが更に強化されていて最初から最後まで岳羽ゆかりの魅力が大爆発、立派にP3のヒロインをしていてゆかり派の私も無事成仏できるゲームでした。アイギスこそがP3の真ヒロインという風潮に長年しんどい思いをしてきましたが、その傷にリロードがスーッと効いて…アイギスも好きなんだけどね。後日談筆頭に当時のP3ディレクターの嫁贔屓のあおりを主に受け続けてきたのがゆかりとそのファンだったので…。
まずCGモデルが可愛い。シフトを受け取る時の笑顔がマジ天使。アニメムービーの作画も力入りまくりで可愛いが溢れまくっています。
初テウルギアイベントでもスポットが当てられており、守られるだけではない、主人公達を守る覚悟を決めたS.E.E.S.の一員としての凛々しい姿も披露されて、新たなゆかりファンも増えたのではないでしょうか。
戦闘中にパーティメンバーの体力が危なくなった時の「私がみんなを癒やさないと…!」というボイスにも痺れました。自分がピンチの時でも仲間を思いやる、これこそが岳羽ゆかりというキャラクターですよ。
性能面でもやたら優秀だったので、バトルユニットとしてもゆかりがお気に入りになったプレイヤーも多かった事でしょう。ありがとう。

 


P3Rありがとうその3

プレイヤーに媚びないシナリオと等身大のキャラ造形が良くも悪くも特徴的なP3ですが、P3Rでは時代的にまずい部分は整えて魅力となる部分は更に伸ばし、結果新規プレイヤーにも愛される作品になったかと思います。
もちろん媚びない所がP3の良さではありましたが、新妻Pが言った通りP3の長所である尖った部分はそのまま残しつつ特別課外活動部の絆を強調してくれたので、私個人はとても嬉しかったです。
ここもね、P3の良さが分からないP4P5ファンやハム子ファンからは「ギスギスしてる」だの「仲良くない」だの「義務的な仕事仲間みたい」だのと散々比較して貶されてきたのでね、やっと汚名返上の機会が巡ってきたと歓喜しましたよ…P4P5ほど仲間内で馴れ合ったりはせず、ハム子ルートのように不自然に仲間が媚びたりしない、けれど何ものにも断ち切られない強い絆は確かに存在する、私の大好きなS.E.E.S.がP3Rにはありました。ありがとう。ここまでされても尚P3をギスギスと言う人がいたら、それはただのP3Rエアプでしょうね。

 

 

P3R開発チームの皆様、制作に関わった全ての方々、本当にお疲れ様でした。
大明神や御大と呼ばれる伝説のクリエイター達が作り、めんどくさいファンが大勢ついている元祖P3をリメイクする事は、さぞ相当のプレッシャーだったでしょう。あなた方がその重圧に負けずP3Rを全力で作り上げてくれたからこそP3のリメイクは最高のゲームになり、怨霊と化していた一人のめんどくさいP3ファンは浄化されました。それを誇ってこれからも最高のゲームを作り続けてくれるなら、いちユーザーとしてこれ以上の喜びはありません。

 

私は過去に、このブログでこう書きました。

もしペルソナ3がリメイクされるなら、後日談はシナリオ演出難易度に一切手を加えずグラフィックのみ最新のものにして収録するか、後日談は収録せず完全なる黒歴史として抹消するかのどちらかしか認めません。
中途半端な忖度とか姑息なシナリオ改良とかいらないです。
全ての批判を受け止める覚悟でありのままの後日談を収録するか、潔く失敗作として闇に葬るか、どちらかをアトラスには選んで頂きたいです。どうしてもシナリオに手を加えたいなら、フェスは失敗作だった、スタッフの自己満でファンを騙し傷つけて申し訳なかった、リメイクが真の後日談だと認めてファンに謝罪するべき。
もちろんハム子ルート抱き合わせリメイクとか論外です。P3無印リメイクかP3フェスリメイクかのどちらかしかいらん。もっと言うならリメイクではなく、無印かフェスのリマスターの方が有り難いですが。


当時の私めちゃめちゃ怒ってんな…と自分で引きますが、この発言を今撤回します。
P3Rチームの方々がP3Fエピソードアイギスをリメイクするとしても、しないとしても、大幅に内容を改変するとしても、私はその決断を受け入れようと思います。
P3R本編でたくさんたくさん幸せにしてもらったので、後日談がどういう扱いになったとしてもまずは受け止めようと心に決めています。

 

3/7追記:後日談リメイクも発表されましたね。内容次第ではもしかすると新しい記事を書くかもしれません。

3/13追記:書きました。エピソードアイギスまとめ①改めてお気持ち表明してみた|ペルソナ3アーカイブ用

 

 

P3Rが発表され、女性主人公と後日談はリメイク作に入れないと公表されてから今まで、ひたすら楽しくて満ち足りた、夢のような日々でした。

P3FやP3PやPQ2に傷ついてきたP3ファンがP3Rに喜ぶ姿を見て、こんな日が来るとは夢にも思わなかったと何度も幸せを噛み締めたものです。
私の大好きな作品を大切にリメイクして下さり、本当に本当にありがとうございました。

 


このブログの更新は、当記事をもって最後にしようと思います。
ツイッター(@mtaou03)や引越し先のnoteではまだしばらく活動を続けるつもりですが、区切りとするには丁度いいタイミングなので。

 

ペルソナ3という作品には、これまで幾度となく心を動かされてきました。

その決定版であるP3Rが素晴らしいリメイク作品となった事、発売から一週間で100万本セールスを突破したのを見届けられた事を、心から嬉しく思います。
今までもこれからも、私はペルソナ3が大好きです。

 

それでは。